leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『破れ星、燃えた』倉本聰

 

昨日の午前中、図書館で予約してあった本書を借り受け、サクサクと読了。

サンケイスポーツ紙に2022年7月~23年2月にかけて連載された自叙伝。

会社を辞め、独立する場面から始まり、テレビや映画の脚本家として活躍。

多くの俳優や裏方、富良野に作り上げた富良野塾のことなど、ページをめくる手が止まらない。

石原裕次郎をはじめ、石原プロの話は、やくざを彷彿とさせる。特に番頭の小政さん。

北の国から」「やすらぎの郷高倉健さんのもてなし、大原麗子さんの最期。

キー局のゴールデンタイムの番組が、まったく観る気持ちがわかず、ドラマは録画したものを1.5倍速でCMをカットしてばかり。

倉本聰さんクラスの若手の脚本家が競い合うなんて、もうないものねだりなのか?

 

1カ所誤植を出版社に指摘したところ、返答をいただき、重版から修正するとのこと。

『アイヴスを聴いてごらんよ』三宅榛名

先輩のブログで高評価だったので、図書館で借りて拝読。

作曲家の筆者が、10年ほど現代作曲家にインタビューしたり、音楽系雑誌に掲載していた記事をまとめ、1977年に発行されたもの。

先輩のブログでは、「アイヴスを聴いてごらんよ」を取り上げていたが、この記事が書かれていたのが、生誕101年目。ということは、今年は生誕150年目。

「前衛」という言葉は、この記事が書かれていた1975年当時なら、中学校で社会主義の歌を合唱で歌わされていた自分にストンと落ちてきていたかもしれない。今のロシアは…。

それでも、アイヴスの「あっけらかんとした楽天ぶり」は、心を晴れやかにするものがある。Spotifyで聴く、"Variation on America" ”Old Home Days Suite"は楽しいぞ。

筆者は、ジュリアード音楽院作曲科を卒業し、帰国後作曲家として活躍されていたようだが、本書を拝読するまで、知らずにいた。

巻末のプロフィールに「作家・柴田翔と結婚」とあり、柴田翔の作品は、大学時代読んでいたので「まるで、庄司薫みたい」と思ってしまう。

ググっていると、「陽の当たらなかった女性作曲家たち」というサイトにいきついた。

エッセイ > 三宅榛名(陽の当たらなかった女性作曲家たちⅡ-7) 石本裕子 | ウィメンズアクションネットワーク Women's Action Network

その後も数冊、本を出されているようなので、それも読んでみよう。

『ジェンダー・クライム』天童荒太

 

図書館で予約していた本の順番が回ってきたので。

2022年12月からオール讀物に連載され、1月に単行本として出版されたもの。

ということは、松本人志の一連の報道前に書かれたものか。それを予言していたかのような内容。

刑事推理物で、登場人物が多く、人物相関図を自分で書けばよかっただろうが、えいやっと読み進めてしまう。

「世代間の相克」というのも一つのテーマか。

結末…ホントにこんなこと、できるのかな? と思ってしまった。

パートナーの呼び方問題は、自分もなかなか苦労します。

作者のデビュー時代の表紙を飾っていた舟越桂さんが29日にお亡くなりになってしまい、残念です。

 

『キャッチャー・イン・ザ・ライ』J.D.サリンジャー 村上春樹訳

 

積ん読になっていた1冊。村上春樹の訳なので、この機会に挑戦したが、何度も挫折しそうになった。文字量が多かったのと、ドラマ的なストーリーがないことが一番。

学校を退学処分になった16歳(!)のホールデンが、自宅に帰りつく前に数日放浪する話しを、彼の独白として、延々綴られている。

考えてみれば、少年の通過儀礼として、さもありなん。という振る舞いだったり、思考だったりするので、「もう少し先を読めば有益な出会いや出来事が起こるのでは?」と期待する方がいけなかったのかも。

村上春樹の解説がつけられる予定だったが、叶わなかったといういきさつが、もっと詳しく知りたかった。

 

『村上T』村上春樹

 

母の通院の付き添いにちょうどよいと思えたので。

雑誌『ポパイ』で毎回、3枚の所蔵Tシャツを紹介。それにまつわるエッセイを連載。

特筆しておきたいのは、

プリンストン大学名誉博士号をもらったときは、隣がクインシー・ジョーンズさんで、卒業式のあいだずっとジャズの話しをしていた。ジョーンズさんは「おれは松田聖子のアルバムのプロデュースをしたんだぞ」と僕に自慢していた…(p.94)

ジャズの話しをしていたら、もっと話しが合うのでは?とも思ったが、そこを強調したかったのね。クインシーさんは。

もう一つは『トニー滝谷』誕生秘話。

このTシャツを買って、『トニー滝谷』という短編小説を書いたんです。(p.146)

ご本人が「私がトニー滝谷です」と手紙をくれたそうで。

イッセー尾形さん(映画のトニー滝谷役)に似ていたのかな?

Tシャツも ”やれ具合” がよいか悪いかが問われるようで。特に首のあたりの。

まあ、サラサラと読めて(眺めて)しまいましたが、マガジンハウスで単行本化されたとわかり、さもありなん。

『村上朝日堂』村上春樹

 

安西水丸氏の挿絵で、日刊アルバイトニュースに連載されたエッセイ集。

1982年~84年に連載、84年7月に単行本化、87年に文庫化された。

後に週刊朝日を定期購読していた私は、本書も、朝日新聞系列で連載されたと思っていたが、まさかの「日刊アルバイトニュース」。朝日のネーミングは偶然なのだとか。

どうでもいいことだな~と思える文章が続き、私は、大谷さんが出ているドジャースのオープン戦と日本航空石川がようやく迎えた甲子園の初戦を二画面テレビで観ながら、音は村上春樹推薦のクラシックを聴くといういい加減さ。

時代を感じさせたのは、「地下鉄銀座線の暗闇」

銀座線の列車は駅に到着する直前に一秒か二秒電灯が消えて、車内がまっ暗になる。

(中略)

でもその時僕がいちばんびっくりしたことは、他の乗客が毛ほども驚いたり、怯えたり、動揺したりしていないということだった。

うーん、当時、私も初めて銀座線に乗ったときは、「何が起こったんだろう?」と戸惑った覚えがある。渋谷にもうすぐ到着というときに限って。

銀座と渋谷という都市をつないでいるんだから、一瞬でもランタンみたいな光に頼るのもどうかと思えた。

村上朝日堂 - Wikipedia

『象工場のハッピーエンド』村上春樹 安西水丸

 

日曜に、Bリーグの試合(横浜の河村が出ていたことと、横須賀出身の田中力が久しぶりに登場し、最後に大活躍!)そして大相撲をテレビで観ながら、パラパラと読み進める。

巻末の対談を観ると、なんと、安西水丸は、一つも文章を読んでから絵を描いていない。なぜか「合うよね」とお互いに褒め合う。

文章は、エッセイ、ときどき創作。

印象的だったのは「クリスマス」(p.26)

生まれてはじめてステレオを買ってもらったとき、それと一緒にビング・クロスビーのクリスマス・レコードがついてきた。

(中略)

1960年12月、我々はとてもシンプルでとてもハッピーで、とても中産階級的だった。

我が家にも、自分の背丈ほどあるステレオセットが運ばれてきたとき、本当にびっくりした。なぜ音楽好きでもない両親が、4畳半の和室にほぼ1畳の長さのセットを買おうとしたのか。そしてやはり、外国のEPがついてきた。ピンク色だったことは覚えている。

あの間取りのあの家のときだから、小学生だったことは間違いない。1970年代前半か?

あまりに我が家の中央にドカンと置かれていたし、レコードを買うという習慣がなかったので、村上春樹のように、ジャズやクラシックを熱心に聴く好機とはならなかった。

でも確かに、とてもハッピーで、とても中産階級だった。