leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『辺境・近境』村上春樹

 

雑誌の連載のために、本人とカメラマンの旅費を提供してもらい、メキシコやアメリカ大陸横断、村上春樹の著書に何回か取り上げられているノモンハン、近場では、讃岐のうどん巡り、大学を入るまで過ごした神戸を歩いた旅行記

ノモンハンのホテルで遭遇した怪奇現象?は、ノモンハンに残された日本兵の霊が、筆者に取り憑いたとしか思えない。なぜこんなに何度も取り上げるのだろう?と思ったが、このときの体験が無縁でなかろう。

メキシコではものをなくし続ける。

それはただただ単純に、まるで何かの法則性にのっとったみたいに、消え続けるだけなのだ。そしてある日、僕はあきらめた。すべての努力を放棄した。

雑誌「波」に「辺境を旅する」という談話記事を再構成したもので、平成10年に刊行されている。

いちばん大事なのは、辺境の消滅した時代にあっても、自分という人間の中にはいまだに辺境を作り出せる場所があるんだと信じることだと思います。

 

『図書館奇譚』村上春樹

 

ドイツ人イラストレーター、カット・メンシックのイラストを生かし、4回目になる書き換えを行なった後に2014年に刊行された本書。

日本人の美しいMANGAにありそうな絵だが、ダークなイラストが、黒い装丁に生える。

ストーリーは、「ぼく」が図書館に迷い込み、羊男に導かれ…。

NHK大河ドラマ「光る君へ」の花山天皇を彷彿とさせる。

この本、ブックオフオンラインで定価1800円のところ、990円で入手できてしまった。

しかも「しおりひも」がそのまま。誰も読んでいないまま、手放したか。

文字通り「美本」でした。

『うずまき猫のみつけかた』村上春樹

 

村上春樹をできるだけ読んでみる…。の一環。

1993年から95年にかけての、アメリカのケンブリッジ滞在記。

あとがきにあるように、1994年春から95年秋にかけて「SINRA」という「きれいな雑誌」に毎月掲載していた文章。新潮社から発刊されていた「ネイチャー雑誌」。2000年に休刊。

『やがて哀しき外国語』の続編という位置づけ。

書いておきたいのは、

高校時代に学校をさぼって家で寝ころんで朝のテレビをみていたとき、(ソニー)ロリンズが『小川宏ショー』に出て『中国行きのスローボート』を吹いていたことをふと思い出した。(p.36)

思わず、隣にいたダンナに、見せてしまいました。

小川宏ショーに、ソニー・ロリンズ…。どれだけアウェーで吹かされたことだろう?

徹子の部屋』も始まっていない頃だろう。

私もだいぶ学校はさぼったけど、覚え続けているような印象的なシーンは特になくて残念。

映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

 

アカデミー授賞式があるこの時期、昨年の受賞作品を、WOWOWでオンエアしてくれる。で、これは、字幕版だけでは満足できず、吹き替え版も拝見。

コインランドリーを家族で営む中国系の主人公一家。

夫は、映画『インディ・ジョーンズ』の子役だった人。授賞式で、ハリソン・フォードと再会のハグをしていた。

おじいさんも娘役も恐ろしい。

仮想の世界がいくつも分裂し、めまぐるしいシーンの連続。

主人公ミシェル・ヨーのカンフーシーンは、他の人には決してできるまい。

カップルの行く末を案じるところを、「ファミリー」の行く末を案じるところこそ、アジア人ならでは。

映画『ザ・ホエール』

 

2023年アカデミー主演男優賞を、本作の主人公ブレンダン・フレイザーが受賞した作品。WOWOWで視聴。

275kgの巨漢を持て余し、単身で引きこもり、オンライン教授として自分のカメラはつけずに指導にあたっているが、健康保険にも入っていない。

離れて暮らす娘、新米宣教師、夜勤の前に血圧や食事の世話をする女性たちが、命が尽きそうな彼をとりまく。

4時間の特殊メイクでこの体躯ができあがっている。

孤独なのは、彼だけでは決してなく、関わる誰もが孤独な一面を持っている。

ブレンダン・フレイザーという役者のここに至るエピソード自体、波瀾万丈。

こういう人が、きっと近くにもいるのかもしれない。

人はお金を何のために稼ぎ、貯めるのか? それも問われている。

『村上ラヂオ』村上春樹

 

雑誌ananに、2000年頃、連載されていたエッセイ集。あとがきで、大橋歩さんが、震えるように「村上さんのエッセイに挿絵や版画を使っていただくことのうれしさ」を綴っている。

連載の頃は、アンノン族も下火になっていた頃か?

実家では、何故かnonnoを月2回母が購入し、姉と読み回し、月刊With誌も購読していた覚えがある。しかし、2000年にはもう結婚して実家を出ていたから、雑誌は何を読んでいたんだろう?

アイドルにはまったく興味がなかった。今のananの表紙がSexyZoneなので、購読者は低年齢化したのかも。

さて、本書。奥さまの話題もよく出てくる。「ひと言多い」と自分の話題を出されてキレるダンナとは大違い。でもこの文章で、ちょっともめることもあったかも。

『骨董屋奇談』。奥さまが趣味の骨董屋見物に筆者もついていったところ、うっかりして10枚揃いの皿の一枚を落として割ってしまう。あとの9枚を引き取ることができる財力があってよかったね。と思うのですが、筆者はそこに魔物が潜んでいるように思えたらしい。

映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』をWOWOWで観ていた私にとっては、期せずしてリンクしてしまった。

村上さんがあの映画の状況にまで追い込まれたとは思いませんが。

『広い野原の下で』の中での新宿西口広場は、私にとっての横浜みなとみらい。

桜木町駅を下りるとコスモス畑が広がっていたのに…。

『影老日記』『江之浦奇譚』杉本博司

 

 

高校の同級生に誘われ、初めて江之浦測候所に行くまで、杉本博司さんのことは存じ上げなかった。「測候所?」「杉本博司?」と何も知らぬまま、小田原近くのJR根府川駅に降り立ち、予約のバスに乗り込み、武家屋敷のような入り口から、直線100mに及ぶ美術館、遙か向こうに明かりの見えるトンネル、能舞台、踏み石、遠くまで続く蜜柑畑。どうも異界に彷徨ったようだ。

もっと知りたいと思い、この2冊を図書館で予約し、拝読。

『江之浦奇譚』は、江之浦測候所のあれこれ。『影老日記』は、筆者の自伝。

本書を読んで再訪したくなった。

BTSのリーダーRMが軍に入隊する前に、ここを訪れたことも話題になり、春休みが終わるまでは避けた方がいいのかもしれないが。