leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『シドニー!』①② 村上春樹

 

2000年オーストラリアのシドニーで開催されたオリンピック観戦記。

雑誌「ナンバー」からの依頼で、三週間、現地に滞在し「わざわざ南半球まで行って実物をみてきた」「見たままを書いたし、感じたままを書いた。」(あとがきから)

②のオーストラリアの歴史が面白かった。

先住民「アボリジニ」が定住せず、豊富な自然を求めて移民生活を送っていたところに、1788年イギリスから送られたのは、「島流し」になった722人の囚人たち。故郷に戻れる期待も持てず、重労働に骨を埋めていく。

1783年にすでにアメリカは独立しており、そこには新天地を求めて自らの意思で渡ってきた人々が前向きに集まっていた。しかしオーストラリアは、「行けって言われたから来たんだよ」と諦観さえ漂う。

そうか。こんなに成り立ちが違ったのか。

シドニーオリンピックでは、陸上選手キャシー・フリーマンが「アボリジニ」の象徴のように持ち上げられていたが、そこには複雑な歴史的経緯があったのだ。

会場間を移動する大変さとか、退屈なホッケーの5位決定戦とか「2度とやらないだろう」という筆者の感想や、ホテルでノートパソコンを盗まれた顛末も書かれている。

巻末に、有森裕子さんのニューヨークでのインタビューが掲載されている。