leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『渋沢栄一「日本近代資本主義の父」の生涯』今井博昭

 

 大河ドラマの主人公のモデル。吉沢亮くん、若すぎるような気もしますが。よいです。

熊谷在住の頃、深谷にも伺う機会があり、深谷駅の駅舎や武甲山の切り崩した風景、セメント工場、麦畑、懐かしいよき思い出です。

その頃、渋沢栄一の存在を自覚したのですが、近年お札にもなり、そして大河ドラマ

改めて生涯を知ると、農民からあっという間に幕府に取り立てられ、パリ滞在中に江戸から明治となり、政府の要人を経て民間人に。まさに、新書の帯にもある「出会いを糧に運命を切り開いた男!」ですな。

パリの街並みが印象深く、田園調布の街並みの参考にしたとも。どちらも印象深い思い出があり、こういうつながりがあったのかと嬉しくなりました。

『こどものために鎌倉移住したら暮らしと仕事がこうなった。』本多理恵子

 

 『ツバキ文具店』の印象が強かったこともあり、鎌倉でカフェと料理教室を開業した筆者の近著が、図書館で借りることができました。

男の子を育てながら、カフェのオーナーとしての物件探し、メニュー、仕入れ、接客、調理、帳簿と、当時の睡眠時間は何時間だったのだろうと心配になりました。

料理教室の「あるある」は、私も感じたことがあります。グループの中で一歩引いてしまうと、「洗い場専門」になり、何も身に着かなかったということに。筆者の料理教室は、観るだけ+試食。寝てしまうのもOKとか。

そして、鎌倉で起業している女性たちを結び付け、「かまフル」という組織を立ち上げるパワフルさ。

コロナ禍でもオンラインでイベントを開催しているようです。この単行本も「地縁」でしょうか、「1ミリ」という七里ヶ浜にある有限会社から出版されています。

営業を続けていくことが難しい鎌倉ですが、新鮮な色とりどりのフルーツ(会員)たちが、しっかりと実を結んでいると実感できる一冊です。

『ヨコハマ物語』大和和紀

 

ヨコハマ物語 全4巻セット 講談社漫画文庫

ヨコハマ物語 全4巻セット 講談社漫画文庫

  • 作者:大和 和紀
  • 発売日: 2002/02/08
  • メディア: コミック
 

 「はいからさんが通る」の作者としては知っていたが、明治時代の横浜を舞台にマンガも連載していた。ブックオフオンラインで大人買いしました。

1981年~1983年に週刊少女フレンドに連載されていた。

横浜の文明開化を表現する風景や言葉が取り上げられ、お嬢さまとその奉公人の二人の女性の波乱に富んだストーリー。

映画「風と共に去りぬ」を思わせる場面も多いが、疱瘡、天然痘、赤もがさなどと言われた「はやり病」に直面するシーンもあり、今も昔も、危機はすぐ目の前。

なかなか心から結ばれない主人公たちにやきもきしてしまうが、当時の女性としては「奥様」に収まることなく、社会的な役割を得て、パートナーを支えていたことに拍手。

「ブラフ」という単語が居留地の別名として注と共に散見されたが、「虚勢を張る」というブラフと同じ語源だということが、今回調べてみてわかりました。

山手 (横浜市) - Wikipedia

biz.trans-suite.jp

自分では使うことのない言葉は、理解も覚束ないものです。

ラ行の英語のスペルは、lかrか、悩むし。

『またね。』木内みどり

 

またね。――木内みどりの「発熱中!」

またね。――木内みどりの「発熱中!」

 

 木内みどりさんが亡くなった報せは、あまりに突然であった。

テレビでは、ずっと貴重な脇役として、その佇まいを今でも思い浮かべることができる。

また、東日本大震災直後から、反原発の動きに邁進し、山本太郎さんとも連動し、運動家と市民との橋渡し役として貴重な存在だった。

本書は、彼女のインタビューや残された文章で構成され、「発熱中!」と称する熱を帯びた行動力、一人で動き回る自由自在さ、今の政治や原発への思いが、彼女のストレートな人柄で伝わってくる。

押し付けがましくなく、おせっかいをすることはどれほど難しいことか。

問題山積の現代に、彼女の笑顔こそ突破力になったであろうに。

家族にも支えられ、見事な「しまい方」にも感服する。

『さざなみのよる』木皿泉

 

さざなみのよる

さざなみのよる

 

 木皿泉の本が、新作でないせいか図書館で予約できたので。

ガンを患った『ナスミ』をとりまく人々の気持ちを丁寧に掬い取っている。

それぞれのエピソードに、『袖振り合うも他生の縁』とも言える「さざなみ」が読み取れる。

『ナスミ』自身、結構ハードな人生を送っていた。

誘拐されそうになったり、気がついたら上司をなぐっていたり。

正義感のなぜる技が、「これにて一件落着」とはいかない不可思議さ。

彼女との「邂逅」こそ、残された者の賜物なのだ。

『昨夜のカレー、明日のパン』木皿泉

 

昨夜のカレー、明日のパン (河出文庫)

昨夜のカレー、明日のパン (河出文庫)

 

 「すいか」というドラマが好きだった。

浅丘ルリ子さんが教授役、主人公が小林聡美さん。ともさかりえさんが、癖のある役を好演していた。再放送で観たのかも。

その脚本家「木皿泉」(夫婦のユニット)が書いた初の小説。

2014年本屋大賞2位になっている。

亡くなった一樹の嫁(テツコ)と父(ギフ)は二人暮らし。

岩井さんというテツコの恋人や一樹の幼馴染も登場し、9篇のエピソードの時空をすぐに了解することは難しいのだが、味わいのある会話や登場人物の振る舞いに、つくづく心が軽くなる。

ステイホーム中(今日も有休)の逃避行動として、冴えているチョイスでした。

ブックオフオンラインで200円。ありがたいことです。

もう一度読んで、伏線のつながりを辿ってみたくなる。

BGMは、Göran Söllscher "Bach: Transcriptions for Guitar Solo" 

『キラキラ共和国』小川 糸

 

キラキラ共和国 (幻冬舎文庫)

キラキラ共和国 (幻冬舎文庫)

  • 作者:小川 糸
  • 発売日: 2019/08/06
  • メディア: ペーパーバック
 

 ブックオフオンラインで、コミック2冊、文庫本6冊、計1610円という超お得な買い物をしました。コミックは読み終え、文庫本の1冊目。

筆者の作品を読むのは初めて。本屋大賞などで、名前は知っていたのですが、図書館の予約数もかなり多く、予約するには至らず。今回、入手でき、つくづくよかった。

鎌倉を舞台に、代書屋を営む主人公鳩子。前作『ツバキ文具店』に登場する人物が既知のものとして本書にも登場しますが、「前作もぜひ読まなきゃ」という気持ちになり、図書館で予約しました。

今、仕事で、お願いの文書を認めることが多いのですが、手紙にこちらの思いを込めることが、どれだけ力量を試されることか、本作でも考えさせられます。

ひと晩時間をかけたり、外出先でよいアイデアが浮かんだり。

仕事のように、右から左へ、時間に追われて心無い文章を粗製乱造するのは、悲しい所業です。

鳩子さんのように、出す人、受け取る人の気持ちを汲み取り、便箋、封筒、インク、ペン、字の大きさ、文体…すべてに神経を行き届かせ、一通の手紙に思いを載せる。

最後に『キラキラ共和国』は、決して大層なタイトルではない。