leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『日没』桐野夏生

 

日没

日没

  • 作者:桐野 夏生
  • 発売日: 2020/09/30
  • メディア: 単行本
 

 桐野夏生さんの新作。予備知識なく、Amazonでポチりました。

小説家が突然、国の機関に拘束され、自作を反省させられ、改悛させられる。

矯正施設では、言動がすべて減点の対象となり、それにより、開放までの期間が左右される。外との連絡も遮断される。

コロナとか、自殺とか、気が滅入る日々に、読み耽るには試練だったが、それでも二日かからず読了。

飛躍かもしれないが、トランプ政権下のアメリカ合衆国で生活することと似ているような。自分が正しいと思うことが頭から否定され、思考停止状態に置かれることが。

日本学術会議の政府による6名の任命拒否も、この流れの一つかもしれない。

そういえば「市民」から「国民」という言い方が、いつからか抵抗なく使われるようになってきた。

自由なんて甘っちょろいと断裁されそうな世の中が、本当に恐ろしい。

国会前デモのニュースも消えてしまったし。

「自分に何ができるんだろう?」と絶えず問い直してみよう。

 

 

『パチンコ』 上・下 ミン・ジン・リー

 

パチンコ 上 (文春e-book)

パチンコ 上 (文春e-book)

 

 

 

パチンコ 下

パチンコ 下

 

 Amazonで注文したら、タイトルで「パチンコの攻略本かと思った」と家族に訝しく思われた本書。

朝鮮半島から日本に渡ってきた「在日」ファミリーの4世代に渡る歴史。

「在日」とはこういう人々である。というステレオタイプ的な考え方に、自分は染まっていなかったか?

キリスト教の長老教会が果たす役割も大きい。YMCAもその流れの一つ。

大阪、横浜も舞台になっている。

家系図をメモしながら、再読したい。

 

『モモ』ミヒャエル・エンデ

 

モモ (岩波少年文庫)

モモ (岩波少年文庫)

 

 高校生の頃、知っていた『モモ』。でも、ちゃんと読んでいなかった。

文庫本で出版されていることを知り、880円のところ、ブックオフオンラインで550円の中古価格で入手。

『モモ』は、円形劇場跡に住み着いた浮浪児(これも死語になるのかな?)

誰の相談事にもじっくり耳を傾け(傾聴?)、楽しくなるようなお話を語り、遊びをみつけ、周りを幸せにしてくれる不思議な女の子。

そこに「時間どろぼう」の集団が襲い掛かり、「あくせく」こそ美徳。時間の貯蓄を進め、人々から余裕をかすめ取る。

そこに「搾取」をかぎ取ったモモが、灰色の男たちに立ち向かう。

あらすじは、ここに詳しい。

名著100「モモ」:100分 de 名著

 

親子関係であれ、職場であれ、一定の「教育期間」は、言われたことを受動的にこなすことであっぷあっぷ。そこを過ぎて「独り立ち」するときは、能動的、直観的に行動を選択し、トライ&エラーしつつ「わが道」を模索する。

ああ、いつになっても、いくつになっても、その繰り返しなんだな。

 

『私はC-3PO』アンソニー・ダニエルズ

 

私はC-3PO

私はC-3PO

 

 スターウォーズシリーズで、重要なキャスト「C-3PO」。

その中には、アンソニー・ダニエルズというイギリス人の役者が入っており、セリフもしゃべっていた。

その貴重な体験を語っている。

彼としては、ジョージ・ルーカス監督の人権軽視、配給会社の秘密戦略に耐え、新シリーズではテレビ出演も果たした。

これをその苦労の一端に触れることができる。

https://www.youtube.com/watch?v=8fCqhpV2SG4&t=1085s

『破壊』遠野 遥

 

今期の 芥川賞は2作同時受賞だった。で、その2作目。

R18に指定してもいいかと思う。

それでも登場人物の「灯」に、そのころの自分を見た。

『首里の馬』高山羽根子

 

 芥川賞を受賞した2作のうち、1作読んだので、感想を。

舞台は沖縄。自称研究者を手伝う少女。迷い「馬」。

何故か今期の直木賞『少年と犬』とシンクロしているような。

コロナのステイホームの先取り感もあったようで。

審査員の選評とか、筆者のひと言とか、作品外の文字に囚われてしまい、作品世界に没頭することを邪魔してしまう。こちらの方を先に読みたくなってしまうのだから、仕方がないが。

選者も評しているように、沖縄という舞台、研究者の来歴、馬の正体など、掘り下げられるところはあったろうに、抑制しているのか、技術が覚束ないのか。

次の作品を読む機会があれば。

 

 

『グラン・トリノ』

 

グラン・トリノ (字幕版)

グラン・トリノ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 クリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』を録画していたので、初視聴。

カーレースの映画かな。という想像は、いい意味で裏切られました。

久しぶりに泣けました。

モン族というラオスの山岳民族の一家が隣に暮らす一軒家で、妻に先立たれた主人公。隣の一家と触れ合ううちに、自らの過去、病、信仰、人種差別と、多くの課題と向き合うこととなる。

他に有名な俳優は出てこないのですが、一族の結束が固いようで、かえって悲劇を招くのは、皮肉としかいいようがありません。

用意周到に成し遂げられる復讐。

結末は、落涙必至です。