leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

村上春樹を2冊

東北への旅行に、村上春樹の文庫本を2冊携えた。

回転木馬のデッド・ヒート

 

 

『1973年のピンボール

 

初期の村上春樹は、まさしく「ピンボール」だ。

あちこちに話しが転がり、予想もつかない衝撃で、時にはピンボールの台から解放されてストーリーは昇華される。

行きの新幹線で、「レーターホーゼン」という短編に出会う。

ある女性が両親の離婚のいきさつを語る。母親のドイツへの55年の人生で初めて一人旅のお土産に「レーターホーゼン」という半ズボンをリクエストした父のために、その店に立ち寄ると、本人がいないと売れないと店主に断られる。せっかくなのだから何とかして手に入れようとするのだが…。

封をしていた感情というものが、「体の芯から泡のように湧きおこってきた」という体験をしたことがないのだが、旅に出ると昔の感情が呼び起こされることが多い。

いきなり一人旅、しかも離婚に至るストーリーにぶちあたり、びっくりだった。

『1973年……』は、僕と鼠が交錯して、いつしか溶け合う。

描かれているエピソードそれぞれに、読み手なりの「深読み」ができそう。