村上春樹を精力的に読んでいる。
1992年に発表されたものだが、当時は読んでみようとは思わなかった。単行本は贅沢なものという思いがあったからか。
60歳を過ぎた今読んでよかったと思う。Spotifyで、編集された本にまつわるBGMを聴きながら、大谷が出場している大リーグ中継もミュートして観ている。
陸自射撃場で、自衛隊員が一人亡くなったというニュースはやるせないが。18歳の自衛隊候補生が犯人らしい。
さて、本書について。作者の私小説かと思ってしまう。12歳の頃からの恋愛遍歴、30代後半のバー経営。そして結婚生活。
Pretend you're happy when you're blue.
It isn't very hard to do.
ナット・キング・コールのPretendの一節。カタカナにしなくてもよかろうに。
12歳の少年がバーで再会した初恋の相手。
片思いは片思いのままが一番。自分の中で最上級の「幻想」で彩られているし。
「風の歌を聴け」とは異なり、文章量は多く、読み応えがあった。
7月9日に再読。
村上春樹の表現に浸ることを後回しに、ついつい自分事に置き換えてしまう。
自分が中高生の頃、それぞれ片思いしていた相手に思いが通じていたら、どうなっていたか。
大学から社会人になったばかりの頃、付き合っていた人と思いを遂げていたら、どうなっていたか。
彼らとは、中年になってから、再会することもあったのだが、そのときは、幸いイズミのような「表情のない」自分ではなかったと思いたい。
島本さんのような抜き差しならぬ関係にならなかったことにも安堵して。
有紀子のようなパートナーを見つけた私は、またいつもの朝を迎えることができている。