leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

映画『ザ・ホエール』

 

2023年アカデミー主演男優賞を、本作の主人公ブレンダン・フレイザーが受賞した作品。WOWOWで視聴。

275kgの巨漢を持て余し、単身で引きこもり、オンライン教授として自分のカメラはつけずに指導にあたっているが、健康保険にも入っていない。

離れて暮らす娘、新米宣教師、夜勤の前に血圧や食事の世話をする女性たちが、命が尽きそうな彼をとりまく。

4時間の特殊メイクでこの体躯ができあがっている。

孤独なのは、彼だけでは決してなく、関わる誰もが孤独な一面を持っている。

ブレンダン・フレイザーという役者のここに至るエピソード自体、波瀾万丈。

こういう人が、きっと近くにもいるのかもしれない。

人はお金を何のために稼ぎ、貯めるのか? それも問われている。

『村上ラヂオ』村上春樹

 

雑誌ananに、2000年頃、連載されていたエッセイ集。あとがきで、大橋歩さんが、震えるように「村上さんのエッセイに挿絵や版画を使っていただくことのうれしさ」を綴っている。

連載の頃は、アンノン族も下火になっていた頃か?

実家では、何故かnonnoを月2回母が購入し、姉と読み回し、月刊With誌も購読していた覚えがある。しかし、2000年にはもう結婚して実家を出ていたから、雑誌は何を読んでいたんだろう?

アイドルにはまったく興味がなかった。今のananの表紙がSexyZoneなので、購読者は低年齢化したのかも。

さて、本書。奥さまの話題もよく出てくる。「ひと言多い」と自分の話題を出されてキレるダンナとは大違い。でもこの文章で、ちょっともめることもあったかも。

『骨董屋奇談』。奥さまが趣味の骨董屋見物に筆者もついていったところ、うっかりして10枚揃いの皿の一枚を落として割ってしまう。あとの9枚を引き取ることができる財力があってよかったね。と思うのですが、筆者はそこに魔物が潜んでいるように思えたらしい。

映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』をWOWOWで観ていた私にとっては、期せずしてリンクしてしまった。

村上さんがあの映画の状況にまで追い込まれたとは思いませんが。

『広い野原の下で』の中での新宿西口広場は、私にとっての横浜みなとみらい。

桜木町駅を下りるとコスモス畑が広がっていたのに…。

『影老日記』『江之浦奇譚』杉本博司

 

 

高校の同級生に誘われ、初めて江之浦測候所に行くまで、杉本博司さんのことは存じ上げなかった。「測候所?」「杉本博司?」と何も知らぬまま、小田原近くのJR根府川駅に降り立ち、予約のバスに乗り込み、武家屋敷のような入り口から、直線100mに及ぶ美術館、遙か向こうに明かりの見えるトンネル、能舞台、踏み石、遠くまで続く蜜柑畑。どうも異界に彷徨ったようだ。

もっと知りたいと思い、この2冊を図書館で予約し、拝読。

『江之浦奇譚』は、江之浦測候所のあれこれ。『影老日記』は、筆者の自伝。

本書を読んで再訪したくなった。

BTSのリーダーRMが軍に入隊する前に、ここを訪れたことも話題になり、春休みが終わるまでは避けた方がいいのかもしれないが。

『親愛なるレニー』吉原真里

 

先輩のブログを拝見して、読みたくなり、図書館で予約。昨日受け取り、今日夕方には読了。改めて先輩のブログを読み直し、私も、下手にあらすじは書くまいと自戒。

レナード・バーンスタインと二人の日本人による、奇跡のような邂逅。

お二人ともご存命だが、この本の出版を了解してくださった。

ここには、「推し」との関わり方のお手本があり、偏見にとらわれない愛情の「昇華」が存在した。

先輩と本書を語るひとときが待ち遠しい。

『やがて哀しき外国語』村上春樹

 

短編のエッセイ集。読みやすかった。

1991年から二年間、アメリカのニュージャージー州プリンストンに筆者は住んでいた。

本書は当時の記録で、文庫本になったのは、1997年。

ヒエラルキーの風景」日本人でアメリカに派遣されている純粋培養官庁系「共通一次男」 の話。

もっともよくわからないのが、自己紹介がわりに共通一次の点数を持ち出す人間の神経である。(p.252)

共通一次元年に運悪く当たってしまい、私立大学しか受けず、しかも一浪している自分には、あり得る話し。

早稲田大学に入学した筆者は、中央公論社から出ていた『世界の歴史』という全集を、繰り返し読んでいたから、世界史が得意だったそうだ。

その程度のいい加減な「好きなことをすきなだけやった」風の勉強ですんなりと入れた。(p.249)

文庫本の附記として

この文章を読んでちょっと「傷ついた」という国家公務員の人たちとも、その後何度か会いました。(p.257)

『久米宏です。』久米宏

 

2017年に単行本として出版されたものが、2024年10月に文庫本となり、それを図書館で予約して拝読。

1970年代、土曜の午後TBSラジオで、「男が出るか、女が出るか」と叫んでいる平野レミとレポートしていた「ワイドラジオTOKYO」が久米宏の初体験。TBSのアナウンサーだった。「料理天国」「ぴったしカンカン」「ザ・ベストテン」のあと、フリーとなり、横山やすしと共に「TVスクランブル」開始。そして1985年「ニュースステーション」が始まり、2004年に最終回を迎える。

外見はスマートだし、スタイリングは奥さまが常時複数用意されている。

本書を通読し、意外だったのは、用意された台本を読むのではなく、取材ビデオを観て率直な感想を伝えることを重視されていたこと。スタート時の目新しさを経て、それが政権側も気にするような一挙手一投足となると、何とも窮屈な立場となる。

ジェーン・フォンダへのインタビュー時に、はいていたパンタロンが『チャイナ・シンドローム』にはいていたものでは? と指摘すると、その後彼を信用し、ロバート・デ・ニーロも「ジェーン・フォンダから聞いて、この番組に出ることにした」とのこと。

横山やすしさんとのこと、初代解説委員だった小林一喜さんのこと、小宮悦子さんのこと、懐かしい顔が蘇る。

年表を見ると、民主党への政権交代東日本大震災福島原発事故自民党政権が復活など、「ニュースステーションの久米さんだったら、何て言っただろう」と思わせることばかり。実年齢は79歳と文庫版あとがきにあるが、「やり残した思い」はなかったのだろうか?

『街とその不確かな壁』村上春樹(再読)

 

昨年の誕生日に、読んでいたんだ。その時の読書のあまりのふがいなさに、リベンジしてみた。今回は、読書環境としては恵まれており、1200枚の長編に没頭することができた。

16歳と17歳の初々しいカップル。「夢読み」という職業。子易さん、添田さん、イエロー・サブマリンのTシャツを着た少年。コーヒーショップの女店主。水曜日の少年。

それぞれ魅力的な登場人物、疑問が余韻として残る情景、現実と非現実の往来…。

ロシア5人組」という言葉も初めて知り、Spotifyで、バラキエフの1949年カラヤン指揮Symphony in Cmajor を聴きながら、これを書いている。

「あと一人」は、ツェーザリ・キュイかな?

ジェリー・マリガンの『ウォーキン・シューズ』もコーヒーによく合う曲だ。

私の生まれた日は、土曜日だった。

今では、『高精度計算サイト』で調べることができる。