直木賞受賞作を購読。
江戸時代、千駄木町の一角が心町(うらまち)と呼ばれていた。
そこに住み着いた「訳アリ」の住人が織りなす人間模様。
短編なので、愛おしく何日かに分けて読み進めました。
江戸情緒が繊細な筆致で描かれ、コロナ禍の孤独と寄り添ってくれたかのようでした。
40年間、日々の家事を淡々とこなし、忙しい夫を支えてきたブリッド=マリー。
夫が心臓発作で倒れたと報せを受け、駆け付けるとそこには愛人が…。
「もうやってらんない!」と家を出て仕事を探すが63歳で40年間主婦だった彼女に紹介されたのは、ボリという町のユースセンターの管理人兼サッカーコーチ。
サッカーなんて、夫が観るもので、自分はルールも知らない。
でも子供たちを観ていると、ほっておけない。センターも閉鎖の危機に。
一日一日の積み重ねで、変わらないと思っていたことも変わるんだ!
今の自分にとてもフィットしていた。観てよかった!
本屋大賞第1位ということで、初めて読む作家さんですが、ポチっと購読。
世界で一番孤独だと言われているクジラ。世界で一頭だけのクジラらしい(帯に書いてあります)のですが、タイトルは「クジラたち」。
そんな比喩にふさわしい登場人物が複数登場してくる作品。
周囲の人物に裏切られ、搾取され、愛されず…。
早起きをしなくてよい生活になったこともあり、夜2時まで読書に耽ってしまいました。
不要なルビ(フリガナ)がたくさんある割に、難しい読み仮名にルビがなかったりします。たぶん、10代に読まれるべき本でもあるので、改善されるべきではないかと。
図書館で予約したら結構すんなり手元に。
若い女性が主人公の短編8作品。母親や祖母、曾祖母との確執も描かれ、色濃く影響しあっていることが読み取れます。
「孫係」という作品では、自分に与えられた役割を全うすることの息苦しさ、目的意識なんてことに気づかされます。私もこの役割意識、どこかで過剰に反応していたかと。
文庫本の解説は、筆者と長濱ねるとの対談だったり、帯も長濱ねるの推薦のことばが載っています。長濱ねる、私、知らなくて、ググりました。
欅坂をもう卒業しているアイドルなのですね。五島列島出身ということで、そういえば、1月から隣に座っていた職場の若い女性が、五島列島出身の美人だったことを思い出しました。痩せていて、ヒールを履いて、スカートが似合って。
たぶん、世代的には、「孫」と言えそうな年齢の女性が多く登場する一冊ですが、「あるある」感は変わりないものです。
フジテレビで『大奥』というドラマがありましたが、一度も観たことがなく、私の世代ではまだ『大奥』と言えば、ロマンポルノの一つという印象が強く、遠ざけておりました。
でも男女逆転の物語として、ジェンダーの面で特筆されるべきストーリーらしいということがわかり、ブックオフオンラインで「大人買い」したのでした。
1巻から12巻まで途切れることなく250円という破格値で入手し、徳川第3代家光の頃から黒船前夜まで読み進めることができました。
何より、男女逆転するきっかけとなった「赤面疱瘡」という流行病をいかにして抑え込むか、ワクチン(熊痘)を入手し、絶やさず、食い止めるために用いるかが大きなテーマになっている。これって、今の「コロナ」の状況と同じだ。
2004年から2015年に連載されていたものなのに。
画筆がまた丁寧で、飽きることなく読み進めることができました。難を言えば、美男美女の書き分けが難しいようで、ときどき着物で見定めなければならなくなります。
男の名前が男性にも女性にも使われているので、混乱するし。
もう一回、慈しみながら読み返すことにします。
まだ読んでいなかった桐野夏生の一冊。
文春文庫になったものをブックオフオンラインで購読。
1999年に「小説トリッパー」に連載されていたもの。
月刊誌だからだろうか、短編小説を読むかのような、時空を錯綜した構成。
筆者の祖母の弟「質(ただし)」は、戦前、日清汽船に勤め、上海・広東間の貨客船の機関長をしており、戦後の昭和29年、親族一人一人に別れを告げ、行方不明になった。彼をモデルに描きつつ、現代の女性を登場させている。
優等生だった有子は、東京での競争にも恋愛にも絶望し上海に渡る。
当時の日本企業で働く高学歴女性が留学して資格を取ったり、現地の企業に入る風潮を参考にしたそうだ。海外でも夢破れ、日本に舞い戻る傾向が強まったのが『玉蘭』を書いた頃だったから。(文庫版のあとがき【2004】より)
だからなのか、読んでいて「ひりひりと痛い」気持ちに何度もさせられた。
ある時代の自分や身近な知人を思い浮かべたり。
「あとがき」をひっくるめて、一気読みがベスト。