leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『玉蘭』桐野夏生

 

玉蘭 (文春文庫)

玉蘭 (文春文庫)

 

 

まだ読んでいなかった桐野夏生の一冊。

文春文庫になったものをブックオフオンラインで購読。

1999年に「小説トリッパー」に連載されていたもの。

月刊誌だからだろうか、短編小説を読むかのような、時空を錯綜した構成。

筆者の祖母の弟「質(ただし)」は、戦前、日清汽船に勤め、上海・広東間の貨客船の機関長をしており、戦後の昭和29年、親族一人一人に別れを告げ、行方不明になった。彼をモデルに描きつつ、現代の女性を登場させている。

優等生だった有子は、東京での競争にも恋愛にも絶望し上海に渡る。

当時の日本企業で働く高学歴女性が留学して資格を取ったり、現地の企業に入る風潮を参考にしたそうだ。海外でも夢破れ、日本に舞い戻る傾向が強まったのが『玉蘭』を書いた頃だったから。(文庫版のあとがき【2004】より)

 

だからなのか、読んでいて「ひりひりと痛い」気持ちに何度もさせられた。

ある時代の自分や身近な知人を思い浮かべたり。

「あとがき」をひっくるめて、一気読みがベスト。