『レキシントンの幽霊』に所蔵されている短編「トニー滝谷」を文庫版で読み、映画『トニー滝谷』をWOWOWで観る機会に恵まれた。
思いがけずいろいろなことを思い起こすこととなり、書き散らしておくのも一興かと。
トニー谷を知っている最後の世代かもしれない。「~ざんす」とソロバンをはじきながらスタンドマイクで歌い踊る。GHQに名付けられた本名の「トニー滝谷」。「トニー谷」とのいじめに遭うエピソードはなかったな。
イラストで生計を立てている主人公トニー滝谷。昔、知り合いの渋谷にあるデザイン事務所のアルバイトをしたことがある。彼も孤独だったのかな?
映画は、市川準監督、イッセー尾形主演、宮沢りえ共演の不思議な映画だった。
左に横スクロールして場面転換がなされ、はじめ、誰が出演しているのか、よくわからなかった。イッセー尾形は、朝ドラ「スカーレット」で陶芸の師匠役を最近観たところだったので、同じに見えてしまった。宮沢りえは、痩せている洋服フリーク。バブルが過ぎても、欲しい服を手当たり次第買ってしまう病は悲しすぎる。
音楽が坂本龍一。映画音楽としては画面と調和しているが、戦メリのような耳に残る旋律はなかった。
レキシントンの幽霊といい、トニー滝谷といい、村上春樹の短編で、タイトルだけ記憶に残っていたものがいくつかある。その一つを映画と読書というアプローチで体感できたことは幸せ。