1月に発表された令和3年下半期の芥川賞受賞作。
自転車で書類などを届ける「メッセンジャー」として働く28歳のサクマ。
疾走感のある都会の描き方がスタイリッシュ…。と思いきや、非正規雇用の生きづらさが綴られ、パートナーとのやり取りにも閉塞感が漂う。
「愚直」に生きると、底辺から這い上がることが本当に難しくなる。
後半は、拘置所内での人間関係が描かれ、独房に自分も閉じ込められたかのよう。
「怒ってないわけないじゃないですか~!」
授賞式での筆者の叫びは、コロナに続くウクライナの問題につながり、皆、大きさの大小はあれ、心底には明日にでもキレるかもしれない「ブラックボックス」を抱えている。