桐野夏生の新作。「結末が肩透かし気味」という読者評を観ていたので、500ページ弱本書の残りが少なくなるにつれ、多くの問題が積み残しになるだろうことは想像に難くなかった。
男に翻弄され、二人の男の子の母となった亜紀は、ネグレクトの末、子どもを置き去りにする。
残された兄の優真は、施設を経て、コンビニ店主夫婦の養子となるが、最低限の躾もなされていない優真には、夫婦の親切心が届かない。
転校した中学校でも無視され、相談員や教師とも信頼関係が築けず、もがいてももがいても穏やかな呼吸ができない。
安易な結末が提示されないことが、かえって功を奏した。