桐野夏生さんの新作。
前2作『バラカ』も『日没』も、「あるある」とはすんなりと共感できない世界観だったので、今回も大きな期待は抱かないようにしてページをめくる。
主人公アキラは、ごく普通の青年。高校時代に特別な経験を共有した同級生の消息を追ってカンボジアへ旅立つ。
海外旅行の経験も語学の才もないアキラは、機内からすでに搾取される側として収奪され、親切に接してくれると思えた人も最終的に信じきれない。現地の人に加えて、言葉の通じる日本人でさえ。
同級生の妹と姉から手がかりを辿り、間一髪の危険を潜り抜ける。
もう少しカンボジアの実情を調べ直さないと、この小説の背景を汲み取れないもどかしさが残る。
どんな活動を繰り広げてくださるか、期待。