1968年、たった26日間のうちに、東京、京都、函館、名古屋で4人を連続して射殺した19歳の永山則夫。その半年後、原宿の夜明けに彷徨い歩いていた永山は逮捕され、1997年に処刑された。
2012年、100時間を超えた精神鑑定のための録音テープが筆者の手に鑑定医から委ねられ、新たな真実が提示される。
永山の筆舌に尽くしがたい心の闇。崩壊していた家族。それでも家族を最後まで頼っていた永山。
死刑を待つ日々で、永山は読書と内省の日々を過ごし、著書を発表し、印税を被害者家族に届けようとしていた。
同時期に吹き荒れた学生運動など、彼の貧困の前には「ぜいたくに悩むことを許されていた環境」に置かれていた恵まれた若者のいたずらとしか思えない。
極寒の地、網走で「親に捨てられる」ということはどういうことか。
何度もやり直そうと思いつつ、何一つ成就しない永山のたった20年足らずの人生。
「よい学校」「よい就職」「よい人生」との対局に位置する人生。
このテープが隠されていた経緯にもやりきれない感情を抑えきれない。