1997年から2020年に「アエラ」や「婦人公論」に発表された女性12人の人物ルポが、加筆修正され文庫オリジナルとしてまとまった。
『森瑤子の帽子』の筆者でもあり、現在、週刊文春で『ジュリーがいた』という沢田研二のルポを連載中である。
この文庫本では、安藤サクラ、上野千鶴子、山岸凉子が興味深かった。
全250ページ中、約70ページを割いているのが、重信房子。
これを読むだけでも大いに価値がある。
パレスチナでの活動が長く、帰国してからは2000年に収監され、肉声がなかなか伝わらない中、彼女の「人となり」に、初めて触れるような気さえする。
友人を亡くし、結婚をして、別の男性との娘「メイ」を生み育てる。
同級生・山田美枝子の言葉が印象的だ。
あの人は、誰にでも仲良しだと思い込ませる能力があるの。男の子の弱い所をフォローするのが上手で、人の意見をしっかり聞いてあげる。虐げられている人へのシンパシ―、社会的なことへの関心が強く、正義の旗を振るのが好きだった。まじめで情けの濃い人です
筆者のルポでは、本人へのインタビューだけではなく、周辺取材から対象者を浮かび上がらせる手法が上手い。時に物足りなさを感じてしまうこともあるが。