leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『ムーンナイト・ダイバー』天童荒太

 

ムーンナイト・ダイバー (文春文庫)

ムーンナイト・ダイバー (文春文庫)

 

 文庫になったので、ようやく購読。

映画は、R-15(15歳未満禁止)とか、P13(13歳未満禁止)があるのだが、和書にはそのような区分は一切ない。中学生が手にすると、ちょっとぎょっとするような描写が続くので、親は要注意。

さて、東日本大震災に想を得て舞台は東北。月夜に海に潜り、会員の思い出の品を海底から集めてくる主人公。前半はもどかしいほどの進行なのだが、後半になり、主人公の戸惑いが伝わり、静かな悲しみを増幅させる。

 

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』ジム・ジャームッシュ監督

 

ストレンジャー・ザン・パラダイス [Blu-ray]
 

 1984年製作。この映画、公開当時とても話題になっていた記憶があるのだが、その前後は、映画などゆっくり見る余裕もない生活を送っていたので、40年近く「ずっと観たい映画」にリストアップされていた。

先日、BSでオンエアされていたのを録画して、ようやく視聴。タイトルと監督の名前だけ記憶しており、あらすじも配役も何も頭には入っていないままで。

観終わった直後は「女性に偉そうにしていると、しっぺ返しを食うよ」という痛快ストーリーと思えたのですが、今、改めて映画について書かれたサイトを観ると、最後はお互いを求めて、愛を成就させたいがための行動だったそうで。

改めて表層的な部分しか読み取れなかったのかと後悔しきりですが、映画のテイストからは、「私の見方でもいいじゃない?」と思える。

相棒となるはずの友人も、とても情けなく、若いときの男同志の友情なんて、あんなものなのかな。

ハンガリーのおばちゃんやいかさまポーカーに怒る男たちとか、年配者は「口うるさいハードル」として描かれております。私ももうそちら側か?

『ある男』平野啓一郎

 

ある男

ある男

 

 母の入院~ホーム入所に至るまで、それでも好きな本を寝しなに読みたいと思い、手にいとった一冊。『マチネの終わりに』を、電子書籍に期間限定無料本の一つとして入れたはずが、読み逃してしまい、悔いが残っていた。

奇妙であり、深いストーリーだ。

あらすじを書き始めたが、予備知識が何もないまま、この本を手に取ることをお勧めする。私もその一人。

ラブストーリーであり、推理小説の趣きもあり、少年の成長譚でもある。

「自分とは何者か」その問いを探る旅に誘われる。

横浜が舞台の一つでもあり、たびたび出てくるジャズの曲を、まとめて聴いてみることにしたい。

『国宝』吉田修一

 

国宝 (上) 青春篇

国宝 (上) 青春篇

 

 

 

国宝 (下) 花道篇

国宝 (下) 花道篇

 

 朝日新聞で「歌舞伎が舞台の連載をしているんだ」と眺めつつ、新聞連載は、一度もトライしたことがなかったので、上下巻が出版されてからの一気読み。

上方歌舞伎女形を受け継ぐ家に、二人の少年がおります。一人は家を背負い、もう一人は極道の刺青を隠しつつ芸養子として、切磋琢磨しておりました。

友情、挫折、裏切りなど、大成するための肥やしは、芸だけでは決してございません。

歌舞伎の配役に合わせて、国宝級の役者になるまでの果てしない道のり。

今、歌舞伎座でも「阿古屋」が上演されておりますが、それも登場します。

と、このような丁寧な文体で、薫り高い芸術の世界を堪能できます。

 

『フーガはユーガ』伊坂幸太郎

ericclaptonmovie.jp

 

今日は、この映画も観たのですが、この本について書いておきます。

フーガはユーガ

フーガはユーガ

 

 双子の風雅と優雅をめぐるクライムサスペンス。

虐待を繰り返す父。読み進めるのが苦しくなるほどだった。

双子ならではのテレポーテーションというギフトを駆使して、二人に降りかかる苦難を乗り越えていく。

すぐにでも再読しないと、頭から零れ落ちたエピソードが帰結しきれていない。

伊坂幸太郎さんは、マスコミにも出ず、エッセイも書かず、このまま寡作でよいので、書き下ろしを発表し続けてほしい。

『母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記』松浦晋也

 

母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記

母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記

 

 書評で取り上げられていたので、図書館で予約。

50代の独身男が、認知症の母親の介護を引き受け、進行を遅らせることができず、一人ではどうにもできなかった悔悟の念を綴った一冊。

ライター稼業、母親も大卒、亡き父親も新聞記者という知的レベルの高い一家に、認知症は予想外の破壊力で日常生活を侵害していく。

努力しても報われない介護の現実。

バイクで映画を観に、シネコンに逃げ込むことが唯一の息抜き。

母親を手にかけてしまう顛末は読み進めるのが辛くなる。

最新の認知症事情も詳しく書かれており、50代男性必読の書。