中学の頃から数学は苦手だった。
50代の頃、携わっていた公立高校入試対策模試の校閲という職では、ルート計算も忘れていた私に、5教科の模試の校閲という仕事が与えられ、泣きそうになりながらこなした。
図書館の新刊紹介でこの本をみつけたとき、「読みたい!」と素直に思った。
少年院の様子がつぶさにわかり、学ぶ機会に恵まれていなかっただけの子どもがどれだけ多いか。家庭でも学校でも、愛情のない場所にはよい教育が提供されない。
数学を知ることは、物事を客観視する第一歩なのだ。
数字や記号に物事を置き換えられることができれば、今、降りかかっている「火の粉の熱さ」もわかる。
二次方程式の解の公式を、2カ月前には分数計算もできなかった院生が、一般的な解法ではなく、独自の式変形に気づき、結果に導く。
本書の事例はまだまだモデルケースの段階のようだが、少年院だけでなく「数学の先生自体が嫌いになる」私のような生徒を増やさないためにも、ローンなどで家計を逼迫させてしまう若者のためにも「ガツン」とさせられる一冊に思えた。