leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『自衛隊失格』伊藤祐靖

 

 父は、幸せな時代の海上自衛官だった。一度も緊張状態には遭遇しなかった。

しかし筆者は、1999年にイージス艦みょうこう」の航海長として、緊張状態に対峙し特殊部隊の創設に関わる。

その8年後、「自分という人間の使い道」を模索し、20年間属した自衛隊を退職する。

本書には防衛大学のこと、女性自衛官のこと、江田島の幹部学校のこと、米軍との合同演習のことなど、知りえなかった内実が語られている。

特に、防衛大学離任の辞は、『空母いぶき』を描くかわぐちかいじ氏が解説で語っているように、「作家性の非常に高い名文」である。

少年マガジンを身体に巻き付け、防弾チョッキの代わりにしようとする隊員。

シンプルに目的の達成だけを考える。それを妨げているのは、日本国憲法9条かもしれない。不確実な存在のままの自衛隊。あっという間に読み終えてしまった。