leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『森瑤子の帽子』島崎今日子

 

森瑤子の帽子

森瑤子の帽子

 

 森瑤子の作品は結婚後よく読んでいた。専業主婦のままでいいのか?という自問自答の解を具現化して華やかなライフスタイルを提示していた。

しかしどの作品にも「家族への罪の意識」が見え隠れし、早逝してしまった。

結局、アラカンとなった私は、森瑤子にはなれなかった。求めてもいないのに、名前だけは近づいたが。「林葉直子に近い」という人より、「森瑤子に近い」と思ってほしかった。

林真理子さんと競うようにカナダに別荘を持ち、パーティー人脈を持ち。

それでも残る友人は片手とも。

作者は婦人公論でもよく目にしていた。多角的に森瑤子を立ち上がらせるのに成功している。娘たちや夫の現状まで。

すばる文学賞を取った出世作「情事」を完成させるまでのエピソードに比べ、多作となった頃の書きなぐった作品との落差。

肩パットもなく、胸の膨らみも強調しない今のファッションは、女性を声高に主張する世界をも隠している。無くしたのではなく、隠しているだけだ。

『あちらにいる鬼』井上荒野

 

あちらにいる鬼

あちらにいる鬼

 

 図書館の予約が殺到し、待ちきれなくなり購読。

著者は作家・井上光晴の娘。彼は美人で聡明な妻と二人の娘と暮らしながら、長年、瀬戸内寂聴と不倫関係にあった。父親が死を迎えるまでの日々を、娘が描く。

井上光晴、魅力的な男性だったと思われるが、#Me tooが叫ばれる現代であれば、アウトな男。正妻にも不倫相手にも「許されている」と独善的な振る舞いで、挙句の果てはカルチャー文学講座の生徒にも手を出してしまっている。

瀬戸内寂聴さん絶賛」と帯にあるのだが、「嘘でなく」描かれていることを「絶賛」しているのか、文学的な価値を高く評価しているのか、どちらだろう?

瀬戸内寂聴さんが、人生相談の名人と崇められているが、本作を読むと回答者としてはどうなんだろう? やはり人生の悩みは、悩み尽くして最終的には自分で解決策を見出さないと。

 

『宝島』真藤順丈

 

第160回直木賞受賞 宝島

第160回直木賞受賞 宝島

 

 直木賞を獲った直後に購読。

舞台は戦後の沖縄。米軍基地から物資を盗み、貧しい人々に還元する「戦果アギヤー」は少年少女たちの高揚したステージだった。ある日、その活動の最中、リーダーが忽然と行方を絶った。リーダーの恋人、弟、幼馴染などが真実を探し求めつつ成長する。

沖縄の方言がルビで振られ、それでなくても500頁以上の分量に、読み進められるか自信を無くしそうだったが、沖縄の方言を味わうのは再読の時。と決めてからは、登場人物たちの行く末が気になり、難なく読了。

『夜のふたりの魂』 ケント・ハルフ

 

夜のふたりの魂

夜のふたりの魂

 

 老後、10年は一人で暮らすことになるだろう。

そんなとき、この本にあるような「寄り添って夜を過ごしてくれる」ソウル・メイトが現れてくれないだろうか?

そんな夢物語をただの「夢」で片づけてしまわないように、この小説は、70歳の主人公が寄り添うことになる関係性から、親族、近所の「視線」も余すところなく表現している。

こんな老後なら悪くない。

 

 

『すぐ死ぬんだから』内館牧子

 

すぐ死ぬんだから

すぐ死ぬんだから

 

 本筋に入る前に中断し、母に貸していたが、その後戻ってきたので途中から読み始めたところ、ただの高齢者ストーリーではないことがわかり、意外な展開に驚き。

画家を気取る嫁というのが、登場人物としては面白く、家族は翻弄されるのだなと。

本妻VS愛人のバトルも、大家族の後押しを受ける本妻が全面的に有利な展開。

ノーサイドという訳にはいかないらしい。

死後離婚の制度も勉強になりました。

 

『ムーンナイト・ダイバー』天童荒太

 

ムーンナイト・ダイバー (文春文庫)

ムーンナイト・ダイバー (文春文庫)

 

 文庫になったので、ようやく購読。

映画は、R-15(15歳未満禁止)とか、P13(13歳未満禁止)があるのだが、和書にはそのような区分は一切ない。中学生が手にすると、ちょっとぎょっとするような描写が続くので、親は要注意。

さて、東日本大震災に想を得て舞台は東北。月夜に海に潜り、会員の思い出の品を海底から集めてくる主人公。前半はもどかしいほどの進行なのだが、後半になり、主人公の戸惑いが伝わり、静かな悲しみを増幅させる。

 

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』ジム・ジャームッシュ監督

 

ストレンジャー・ザン・パラダイス [Blu-ray]
 

 1984年製作。この映画、公開当時とても話題になっていた記憶があるのだが、その前後は、映画などゆっくり見る余裕もない生活を送っていたので、40年近く「ずっと観たい映画」にリストアップされていた。

先日、BSでオンエアされていたのを録画して、ようやく視聴。タイトルと監督の名前だけ記憶しており、あらすじも配役も何も頭には入っていないままで。

観終わった直後は「女性に偉そうにしていると、しっぺ返しを食うよ」という痛快ストーリーと思えたのですが、今、改めて映画について書かれたサイトを観ると、最後はお互いを求めて、愛を成就させたいがための行動だったそうで。

改めて表層的な部分しか読み取れなかったのかと後悔しきりですが、映画のテイストからは、「私の見方でもいいじゃない?」と思える。

相棒となるはずの友人も、とても情けなく、若いときの男同志の友情なんて、あんなものなのかな。

ハンガリーのおばちゃんやいかさまポーカーに怒る男たちとか、年配者は「口うるさいハードル」として描かれております。私ももうそちら側か?