オウム真理教の死刑囚13名が処刑され、あの真相がこれ以上語られることはないと思われていた。しかし、本書で遺された内容は、サリンという化学兵器がどのように作られ、世界を震撼させたか綴られている。
しかも、金正男殺人に使用されたVXガスもオウムが深く関わっていたのだ。
科学的に真実を残すと、それを参考に作られてしまい、第2、第3の犯行が繰り返される。オウムの土谷正美も、サリンを、著者の本にヒントを得て難なく作ってしまったのだ。スウェーデンのイランプラント施設に関する記述が、オウムのサティアン建設のヒントになったという事実も驚きをもってとらえられた。
中川智正は死刑になったが、彼が冷静に残したやりとりは、彼の置き土産に十分なりえている。