leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『彼は早稲田で死んだ』樋田 毅

 

1972年、早稲田大学構内で、リンチ殺人事件が起こった。

筆者は早稲田大学文学部に入学して半年後の早稲田祭が終わった二日後に、この事件に遭遇する。

川口君は、革マル派の学生にスパイの疑いをかけられ、壮絶なリンチを受けて殺された。

筆者は、革マル派への怒りと恐怖とともに「寛容は結局は不寛容に勝つに違いない」との渡辺一夫の著作にも影響を受け、新しい自治会結成に踏み出す。

革マル派中核派社青同解放派などの「内ゲバ」に屈することなく、革マル派からの襲撃に脅えながら抵抗を唱えつつ、筆者は三年生の春、運動から身を引いた。

後に朝日新聞記者として、グリコ・森永事件、阪神支局襲撃事件等の記事を手掛け、2017年に退社、本書をまとめた。

2012年に、革マル派の一文自治会副委員長、大岩圭之助さんの近況を知り、半世紀後の2021年3月と4月、本人と会い、対談として掲載されている。

何と、彼は25歳でアメリカに渡り鶴見俊輔の授業を受け、「辻信一」と改名後、明治学院大学国際学部で長年教鞭を取り、スローライフを提唱する社会思想家として活動している。キャンドルナイト(熊谷にいたときに、何回か体験した)も彼の提唱で始まった。

「僕は人間の本質は寛容だと思っているんです。人類は寛容の方向に進化してきたというのが僕なりの結論です」

「僕は残された人生で、自分なりの性善説を広めて社会の役にたてればなと思っています」

対談は一部平行線のままで終わっている。

関係者の何人かは既に故人となっている。