leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『一度きりの大泉の話』萩尾望都

 

 図書館で一度予約したが、20人以上待ちだったので、待ちきれず購読。

1970年に大泉で竹宮恵子さんと同居し、数々の女性漫画家との交流を重ねながら、自作の作成を続けたが、2年ほどでその生活は「解散」。

そのいきさつを「一度きりしかしたくないけど」一冊にまとめた。

マンガではなく、書き下ろしだが、インタビュアーの助けもあり、読みやすい。

私は10代の初めで、「マーガレット」や「りぼん」をやっと読むくらい。

少女コミック」を中心に発表していた作者も竹宮恵子さんの作品も、同時代では読むこともなく、長い間、二人の作品を混同していたことも。

この作品は、当時の漫画家が実名で登場するので、うれしくなってしまう。

何よりこの本の「キモ」は、才能ある女性が、人間関係に関していかにうまく折り合いをつけていくか。

作者は、人間関係の軋轢を避けて、目の病気までして転居したのだが、その経緯を理解してもらおうとは思わず、作者当人も、この一冊を上梓するまで、整理はついていなかったのかもしれない。

60年も生きてくると、自分も封印をしたくなる人間関係がいくつかある。

転居や辞職という形で、フェードアウトをしたのだが、周囲の方は、「本当の私の気持ち」はわからず仕舞いだったろう。それでよいこともある。

男性漫画家を多数輩出した「トキワ荘」も、ある漫画家から観ると、「いいことばかり」ではなかったそう。

萩尾望都さんのご両親との関係も、心が締め付けられる思いがする。