図書館で予約できたので。
「桜隊」という移動演劇集団が、広島で被爆したことは知っていた。
中心人物の丸山定夫をはじめ、映画「無法松の一生」に出演した園井惠子をはじめ、団員9名が命を落とした。
「桜隊」演出家の八田元夫が残したメモが早稲田大学演劇博物館の倉庫で発見され、空白となっていた悲劇の詳細が綴られている。
演劇という「芸術活動」を続けること自体、治安維持法を振りかざした当局から目をつけられ、それをかいくぐるには、江戸時代の絵踏のような究極の妥協があり、それが戦後「戦争協力」と弾劾されたのだとしたら、生き残った八田もさぞかし辛かったことであろう。
かすかに記憶に残る名優(多々良純、原泉ら)の名前もあり、非常に読みごたえのある一冊だった。