leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『地蔵千年、花百年』柴田翔

 

地蔵千年、花百年

地蔵千年、花百年

 

 『されど、われらが日々』で芥川賞を受賞した柴田翔の遺言ともいうべき一冊。

彼の小説には、大学紛争の影がいつもつきまとう。

この小説でも「オキシン」という謎の人物により、主人公の思いがけない行く末が語られ、海外生活での悔恨、帰国後の家族との交わりなど、モザイクのような「来し方」が描かれている。

無神論者の遺骨に対する考え方も、深く提示されている。

場所や人物を特定することのマイナスを考慮してか、××××と表記してあるところが散見されるが、読者からすると、架空の名称をつけてもよかったかも。読書の流れがちょっと止まってしまうので。

何人か出てくる異国の女性が、多様性を持っていることに好感が持てた。

彼の小説を読める「至福の時」はこれが最後になってしまうのだろうか?