leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

恋歌(れんか)

 直木賞を受賞したことで、初めて知った著者の作品。

時代背景や主人公の生涯など、一切知らぬまま、読み始める。

 

明治時代、歌塾「萩の舎」を主宰する中島歌子という歌人の弟子「花圃」が、師匠が倒れたという知らせに駆けつけた。師匠の私室を整理していると、師匠の手記がみつかり、それがこの物語の核をなす。

 

江戸の池田屋という宿を営む娘(登世・のちの歌子)が、水戸藩の武士に見染められ、爺やと共に嫁入りする。

夫の遠慮(まさしく!)から、実の婚姻は結ばれていなかったが。

小姑「てつ」もなかなか打ち解けてはくれない。

日本史に強くない私でも、江戸時代の水戸藩徳川御三家であり、幕末に大きな影響力を持っていたことは知っていた。その水戸藩を二分するような争いが起こり、武家の家族まで悲劇に巻き込まれる。天狗党と諸生党の戦いである。

夫を一途に待ち続ける主人公。「爺や」や「てつ」も時代に翻弄されて・・・。

 

君にこそ恋しきふしは習ひつれ

さらば忘るることもをしへよ

 

本の帯にある一句だが、この思いが読後にひしひしと伝わる。

 

 

 

恋歌

恋歌