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leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

イスラーム

明治学院大学戸塚キャンパス 公開セミナー「歴史と現在」第8回 
2011年11月29日(火)
テーマイスラーム
山内昌之×大川玲子

山内昌之先生の略歴 1947年生。東大教授。歴史学者。著書に『スルタンガリエフの夢』『イスラームとアメリカ』『瀕死のリヴァイアサン』『リーダーシップ』。

ホスト役の大川玲子氏・自己紹介 明治学院大学准教授 専門はクアルーン(コーラン)。山内氏の講義が初めてのイスラーム関連のもので、テキストが『スルタンガリエフの夢』。卒論の口頭試問で、山内氏から「あなたは、井筒俊彦を超えられると思うか?」と問われたのが印象的だった。

1.山内氏がイスラム、中東に関心を持ったきっかけ
「アラーの導きのままに」と言いたいところだが、子どもの時から歴史好きで、西洋の古典に親しんできた。
イスラムより前にロシアに関心を持ち、当時の文科系学生の流行として、ロシア、社会主義、マルクスに傾倒、レーニン全集を購読した。
その中で、ロシアの中のイスラム世界が、忘れられ、隠されたイスラムであることに着目し、スルタンガリエフという人物を通し、ナショナリズムとは? 愛国心とは? 探ることになった。

ポストドクターの時期、ソ連、モスクワに留学したかったが、当局に危険視されたテーマでもあり、エジプトのカイロに行くことになった。カイロ大学日本語学科で3代目スタッフとなり、アラビア人に英語を介して日本語を教えることになった。当時の生徒は、すぐ質問して、素直に日本語を吸収した。コーランを子どもの頃から暗唱していたせいもあろう。日本人の授業では「かくも哲学的な沈黙」がまかり通っていることに、改めて驚きを覚えた。

2.日本のイスラーム、中東研究への評価
大川周明―山形県鶴岡市出身の思想家、イスラム研究者『回教概論』。植民地のインドの現実を、このままでいいのかと問いたサンスクリット学者でもあった。戦後の東京裁判でA級戦犯にされたが、東条英機を叩いたあげく、精神病で免訴された。戦後コーランを全訳。西洋とアジアの対立構造やアジアの統一を模索。
井筒俊彦、『イスラームとアメリカ』一つの言語に一人の家庭教師がつく環境で、言語能力は極めて高かった。20代にアラビア語を習得。イスラムに触れる。東洋思想を考えることで、日本や禅の思想を再考。

山内氏は、「イスラームとアメリカ」を、1993-94のハーバード大学留学体験もあり、当時は関係ないと周囲からは冷淡な評価を受け、当時、アメリカ人研究者はいたものの、外国人研究者としては初のテーマ。9.11後、注目される。

3.「リーダーシップ」刊行に至るまで
中東のリーダーシップやサラディンの統治などの帝王学マキャベリ君主論などを研究してきたが、一市民であるという意識を重視してきた。専門研究も日本人にこだわってきた。震災後、学者が貢献する場面が訪れた。日本の進路について、政権交代もバラ色の未来とは言えなかった。リーダーを盛りたてず、批判ばかりしている。知見を知らない市民に伝える使命がある。現実との架け橋に。
胆力を持ち合わせない日本の政治家。明治時代の福沢諭吉渋沢栄一松方正義などのリーダーシップに目を向け、リーダーの出現を是とする気風を生み出したい。
リーダーシップを論じる姿勢は、日本が世界で一番低い。

4.現在の中東情勢は春なのか? 民主化は?
“Sea Change” 大隆起となった20Cの民主化に匹敵。アラブの国には、隠された冷酷さがあった。エジプトではナセル、サダト、ムバラクと独裁政権が続き、友人、家族が秘密警察の一員かもしれないという見えない恐怖の壁があった。市民の自由な選択、アクセスしたいという希望をふさいでいた。不満は欧米への反発につながり、国内への不満へと還流していた。
アラブの人々は3つのものを求めている。隷属、束縛からの自由、法の支配からの自由、development(豊かさ)だけでない、心の豊かさ(social development)これはカタールやオマーンの国王でさえ、標榜している。

〜質疑応答から〜

(山内)
日本の小選挙区制はダメで、定員3名の中選挙区制が理想。中庸の人を入る余地があるから。
中国は、10%がイスラム系の少数民族。ウイグル自治区もある。資源を守ることが国策。

中華人民共和国は、抗日で一つになり、国を固めた。その中の対立は小さい。宗教、歴史、文化、帰属意識など、矛盾しているが、経済開発優先で統治している。

中東政策、石油エネルギー政策について、日本の政策はよくない。中東に対する最大の武器輸出国は中国やロシアであり、シリアのアサド政権を支えている。シリア制裁に、両国が反対している原因にもなっている。
石油最大貿易国として、日本から中国にシフトしている。環境破壊は軽視し、産業や経済の発展を重視。

歴史は、フランス、アナール学派によると、長期的、中期的、短期的持続により生み出されるもの。
一つの事件の重みが記録となり、歴史となる。
事件は、真っ暗な天空に星が輝き、次の瞬間に消える塵(ちり)のようなもの。
基礎的状況がゆっくり変わる、波のようなものが歴史的インパクトとなる。