leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

切羽へ

直木賞受賞作。
井上光晴氏の娘といわれても、井上光晴氏の作品を覚えているわけでもなく。
今回の直木賞の本命は、伊坂幸太郎との下馬評だったが、本人が「静かな作家活動をしたい」という理由で、受賞拒否。
そして、この「妹の名前が切羽という珍しい名前なので」という由来のタイトルの本作へ。
島に住む夫婦。微妙な距離感。
妻は小学校の養護教諭。夫は画家。
同僚の月江の存在がおもしろい。
生徒もPTAも、月江先生の不倫を承知し、行く末を案じている。
「島」の話なのだが、それは「離島」ではなく、毎日、フェリーの行き来がありそうな、都市生活とのこれまた微妙な距離。
そこへ新任教師の石和先生。
人物描写がおぼろげなだけ、読者に想像を掻き立てさせる。
彼に惹かれる妻。夫の立ち位置の不安定さ。
結末は・・・。
まあ久世光彦演出の「2時間ドラマ」のような内容ではありますが、伊坂幸太郎たちの「ビュンビュン」疾走するようなスピード感、若者感に毒されつつある頭には、やんわり沁みる話。

切羽へ

切羽へ