leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

水頭症の名医と出会う

あまり身内の話をブログに書くのは好きではないのだが。
数年前から、父の歩行困難、失禁、認知症が進み、2年前にある医者に診せたところ、「正常圧水頭症」の疑いが強いと言われ、手術を検討した。
しかし、当時の水頭症の手術は、頭から腰に管を入れ、余分な髄液を調節するというもの。病院は非常に混雑しており、父は、待たされるだけで不平を大声に出す有り様で、医者もこのような年齢の患者は症例が少ないと婉曲に断られ、もう少し様子を観ようということになった。
今回、入所している施設から、再度、提案があり、同じ医者に紹介状を書いてもらったのだが、やはり母は不信感が強かったらしく、HPで調べたところ、そこよりも近く、父が以前かかっていた馴染みのところに名医がいるというところがわかり、母が資料を飛び込みで持ち込んだところ、「4日に本人を連れてきてください」と言われた。
ダンナと朝9時過ぎの電車に乗って、その病院の脳神経外科に向かうと、既に父と母、そして付き添いの施設の人が到着していた。
内診、レントゲンを撮ったあと、母と私とダンナに説明があった。父は、少しでも嫌なことがあると、すぐに大声をあげる。近年、その兆候が著しい。
「たいへんな人ですね。できたら関わりたくない。でも、見捨ててはおけないですね。まずはテストをしてみないと。年齢や血圧の面では大丈夫。数年経てば治る人もいるけれど、メカニズムはよくわかっていない。頭を通すのではなく、腰に通します。私が開発した手術です。私が日本で一番手術数が多いでしょう」著作もあり、診断ガイドラインの作成にも携わっている。
すごい!
土曜というのに、特別に診てくださるなんて。と不思議に思っていたら、テレビ局がその名医の取材に来ていた。私どもにも「テレビの取材に協力してもらえますか?」との依頼が先生からあり「あんな叫ぶ患者でふさわしいのでしょうか?」と苦笑しながら尋ねると「ああいう人が治るというところも症例としてはいいケースだと思えます」と言われ、苗字も非常にありふれた名前だし、娘は二人とも改姓しているし「どうぞどうぞ」と言ってしまった。その方がよくしてくれるのなら、逆にうれしい。
「(父が頑固そうなのをみて)一銭にもならないのに、たいへんなことをお引き受けするのですよ」と言われ、「どうぞ取材してもらってたっぷり謝礼を得てください」と思ってしまった。
あんなに大声をあげる認知症患者は珍しいらしく、ほとんどの認知症患者というものはシュンと大人しくしているらしい。これも初めて知った事実。
帰り際、父と握手して「よろしくね」と挨拶してくれたその医者に、心から感謝の気持ちで一杯になった。