ついつい購入してしまう桐野夏生の新作。
今回は、披露山がモデルであろう高級住宅地が舞台。
8年前に海上で失踪した夫への喪失感にさいなまれる主人公と妻に先立たれた富豪の再婚。
周囲の思惑、妬み、前回の結婚に対する悔恨。
現在の結婚生活のきしみ。
筆者の淀みない筆致が、もどかしさを超え、ページ数が少なくなると「もう終わってしまうのか」とさえ。
結末がつかないまま終わってしまうかと思いきや、しっかり結果をみせてくれる。
41歳という主人公の年齢が、私にとっては、とても若い。でもその年代を主人公にして小説を描いてくれる筆者はなかなかいない。