leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『僕は庭師になった』村雨辰剛

 

僕は庭師になった

僕は庭師になった

 

 NHKの『筋肉体操』を観てこんなに美しい人が現実に存在するのだと思い、注目していたら、本を出版。Amazonで購読。もちろん一刷。

なぜスウェーデン人が日本庭園を学び、日本に帰化して、「筋肉体操」に出ることになったのか。

感心したのは、掃除を通しての修行。親方も本気度を見極め、弟子も親方の技を会得する。本物の「睨み合い」。

口絵の写真が、鎌倉の光明寺ということもうれしい。桜の季節に訪れたい。

スウェーデンの教育制度、家族の在り方も、今の彼を成り立たせる大きな要因。

今後、日本庭園を通じて世界の架け橋に。というオファーが多くなることが予想されるが、まずは日本人を満足させて、何千年も残るような庭を造る庭師になってくれることを願います。

 

 

『世界一ゆるい聖書入門』上馬キリスト教会

 

上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門

上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門

 

 ツイッターは以前から注目していたが、本が出版されたので、購読。

こんな内容の「キリスト教概説」なら、大学でAをもらえたのに。

ノンクリスチャンにとって、聖書の冒頭の人名が並ぶところで、まず挫折してしまう。

でもそれぞれの面白エピソードを紹介していただけると、今まで名前だけしか知らなかった、名前さえ知らなかった人物たちの姿形がおぼろげながら夢想できる。

「ふざけ」担当より「まじめ」担当の方が牧師に怒られることが多いそうだが、この教会の懐の大きさが感じられる。きっと明日の礼拝も賑わうことだろう。

 

『森瑤子の帽子』島崎今日子

 

森瑤子の帽子

森瑤子の帽子

 

 森瑤子の作品は結婚後よく読んでいた。専業主婦のままでいいのか?という自問自答の解を具現化して華やかなライフスタイルを提示していた。

しかしどの作品にも「家族への罪の意識」が見え隠れし、早逝してしまった。

結局、アラカンとなった私は、森瑤子にはなれなかった。求めてもいないのに、名前だけは近づいたが。「林葉直子に近い」という人より、「森瑤子に近い」と思ってほしかった。

林真理子さんと競うようにカナダに別荘を持ち、パーティー人脈を持ち。

それでも残る友人は片手とも。

作者は婦人公論でもよく目にしていた。多角的に森瑤子を立ち上がらせるのに成功している。娘たちや夫の現状まで。

すばる文学賞を取った出世作「情事」を完成させるまでのエピソードに比べ、多作となった頃の書きなぐった作品との落差。

肩パットもなく、胸の膨らみも強調しない今のファッションは、女性を声高に主張する世界をも隠している。無くしたのではなく、隠しているだけだ。

『あちらにいる鬼』井上荒野

 

あちらにいる鬼

あちらにいる鬼

 

 図書館の予約が殺到し、待ちきれなくなり購読。

著者は作家・井上光晴の娘。彼は美人で聡明な妻と二人の娘と暮らしながら、長年、瀬戸内寂聴と不倫関係にあった。父親が死を迎えるまでの日々を、娘が描く。

井上光晴、魅力的な男性だったと思われるが、#Me tooが叫ばれる現代であれば、アウトな男。正妻にも不倫相手にも「許されている」と独善的な振る舞いで、挙句の果てはカルチャー文学講座の生徒にも手を出してしまっている。

瀬戸内寂聴さん絶賛」と帯にあるのだが、「嘘でなく」描かれていることを「絶賛」しているのか、文学的な価値を高く評価しているのか、どちらだろう?

瀬戸内寂聴さんが、人生相談の名人と崇められているが、本作を読むと回答者としてはどうなんだろう? やはり人生の悩みは、悩み尽くして最終的には自分で解決策を見出さないと。

 

『宝島』真藤順丈

 

第160回直木賞受賞 宝島

第160回直木賞受賞 宝島

 

 直木賞を獲った直後に購読。

舞台は戦後の沖縄。米軍基地から物資を盗み、貧しい人々に還元する「戦果アギヤー」は少年少女たちの高揚したステージだった。ある日、その活動の最中、リーダーが忽然と行方を絶った。リーダーの恋人、弟、幼馴染などが真実を探し求めつつ成長する。

沖縄の方言がルビで振られ、それでなくても500頁以上の分量に、読み進められるか自信を無くしそうだったが、沖縄の方言を味わうのは再読の時。と決めてからは、登場人物たちの行く末が気になり、難なく読了。

『夜のふたりの魂』 ケント・ハルフ

 

夜のふたりの魂

夜のふたりの魂

 

 老後、10年は一人で暮らすことになるだろう。

そんなとき、この本にあるような「寄り添って夜を過ごしてくれる」ソウル・メイトが現れてくれないだろうか?

そんな夢物語をただの「夢」で片づけてしまわないように、この小説は、70歳の主人公が寄り添うことになる関係性から、親族、近所の「視線」も余すところなく表現している。

こんな老後なら悪くない。

 

 

『すぐ死ぬんだから』内館牧子

 

すぐ死ぬんだから

すぐ死ぬんだから

 

 本筋に入る前に中断し、母に貸していたが、その後戻ってきたので途中から読み始めたところ、ただの高齢者ストーリーではないことがわかり、意外な展開に驚き。

画家を気取る嫁というのが、登場人物としては面白く、家族は翻弄されるのだなと。

本妻VS愛人のバトルも、大家族の後押しを受ける本妻が全面的に有利な展開。

ノーサイドという訳にはいかないらしい。

死後離婚の制度も勉強になりました。