leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『ドリーム』

 

ドリーム (字幕版)

ドリーム (字幕版)

 

 アカデミー賞授賞式で、この映画を知り、いつかは観たいと思っていたが、WOWOWで放映されたので、録画して視聴。

60年代のNASAで、黒人女性が実力を発揮する物語。

女性を含む白人が、自らの偏見を打破する過程が面白い。

3人は知り合いだが、共闘するのでなく、それぞれの役割でのし上がっていく。

初めての有人飛行も、彼女たちの成果があってこそ。

もっと早く世に知られてもよかった。

『泣き虫しょったんの奇跡 完全版』

 

泣き虫しょったんの奇跡 完全版<サラリーマンから将棋のプロへ> (講談社文庫)
 

 奇しくも映画版が上映されたそうで。

NEC出身ということもあり、以前から存じ上げていた。

地元だったことは最近知った。

そして、こんなにも過酷な経歴だったのかと本書で知りえた。

少年期、奨励会での記述が克明に綴られている。

この文庫版には、本編の後日談もあり、「完全版」となっている。

映画の監督も俳優に将棋のプロの打ち方を厳しく指導したそうだ。

母の新米ナース時代

母の新米ナース時代のことを初めて聴いたので、書き残すことに。

昭和6年12月生まれの母は、終戦時14歳。

国民学校終了時に、舞鶴の国立看護学校による入学募集に応募。

受験した半数が合格し、遠方からの合格者と共に、4人部屋の寮生活を始める。

舞鶴港では昭和20年9月から引揚船が到着したが、当番になると、DDT消毒をされた大陸からの人を何人か受け持ち、移動させる役目を与えられた。

母が建物の3階か4階にあったトイレに行きたくなると、少年兵らしき人が「行ってきな。僕が見ててあげるから」と役目を代わってくれた。

舞鶴から福知山まで見送りの付き添いに電車で同行すると「ここからどっち方面に行こうかな。俺んち、農家で食い扶持がないから。」と困った顔の男性を幾人も見送ったそうだ。

5年で、正看護師の資格を取得。

その間も多くの引揚者の受け入れをしたようだ。

数年、舞鶴で勤め、東大阪などで勤務のあと、祖母にリウマチが悪化したため実家に近い、舞鶴自衛隊地区病院で勤務。そこで埼玉から来ていた経理をしていた父と出会うんだな。

戦後10年は、ほぼ母の10代と一人前の看護師になるまでのストーリーが詰まっていた。

『盤上の向日葵』柚月裕子

 

盤上の向日葵

盤上の向日葵

 

 この夏に読むべき本と各紙で推奨されており、購読。

はじめは、章ごとに設定が異なり、登場人物も時系列も変わるので、読み進めるのに少々時間がかかる。

それでも、3分の1ほど読むと、その世界に引きずりこまれる。

羽生さんかな? 瀬川さんかな? とモデルのような方を想像するのも楽しい。

ドラマ「ふたりっ子」で、中村嘉葎雄さんが、「伝説の勝負師」役をされていたことも思い起こされる。

刑事二人のバディものとしては、掘り下げ方がここでは薄く感じられるが。

 

『約束された場所で』村上春樹

 

約束された場所で (underground2)

約束された場所で (underground2)

 

 オウム真理教による地下鉄サリン事件で、死刑を執行された7名の報を受け、教団側のインタビューをまとめたこの本を入手して、改めて考えてみた。

何らかの方法で、不規則発言を繰り返す松本智津夫に、検察と司法が真相究明のために語らせる方策を取って欲しかった。遺骨を4女に託した死刑囚は、相応の思考力、判断力を持ち合わせていたと思われ、家族に対する思いもできるだけ語らせて記録に残すべきだった。

そして、彼の死刑を執行してから、他の6名の死刑囚にその事実を告げ、現在の心情を語らせ、それもすべて公開すべきだったのではないか。

本書を読んで、自己を持ち続けることの生きづらさとひきかえに、上からの命令に服従することの平穏がオウム信者にみられたが、それは官僚、会社、軍、学校、どの組織でも多かれ少なかれ存在することではないか。そこから自己を遠ざけるには、ひきこもるか、独自の功績を挙げるかないのかもしれない。
物静かな人こそ、確固とした自分を持っている人と思えてしまう。

 

 

『送り火』高橋弘希

芥川賞受賞作。ストーリーは、まったく前知識なし。

東北の過疎地で繰り広げられるいじめ。

いじめの手段は、「昔ながらの」と思わせながら、作者のオリジナル。

ここには「魂の救済」がなかった。

都会も田舎も、変わりはない。

男の子だから、危ない橋もわたる。

情景描写はよく練られているのだが。

『盲目的な恋と友情』辻村深月

 

盲目的な恋と友情 (新潮文庫)

盲目的な恋と友情 (新潮文庫)

 

  図書館で予約して借りた一冊。

学生オケに属する主人公が経験した学生指揮者との恋を、前半は当人が、後半は友人が、それぞれの立場で綴る。

恋に嵌るまでの経緯が、当人同士ではない、指導者、親、愛人の策略によるものであることが、そもそもぶっとんだ設定。ただの美男美女のカップルのストーリーでは終わらない「盲目的」ぶり。

そして、それを見守るはずの友人の何と屈折している思い。

ブラバンにいた自分にとっては、ちょっと「あるある」。